里山エッセイ
鬼のかく乱
2012年4月18日 ぞめき(徳島新聞 夕刊 コラム)里山エッセイ
満開の桜に春の嵐、 花びらのじゅうたんは薄桃色、 花吹雪もまた風情。 それにしても寒いな、花冷えだと嘆いていたら、 途端に風邪をひいた。 10年ぶりのこと、鬼がかく乱にやって来たらしい。 風邪など引く間もなく走っていたと …
写真家荒井賢治さん
2012年4月4日 ぞめき(徳島新聞 夕刊 コラム)里山エッセイ
レンギョウにミモザ、エニシダ。 黄水仙に菜の花、みつまたの花。 春の黄色あふれる佐那河内、 昨年11月に亡くなられた 荒井賢治さんの写真展を見た。 誰をも惹きつけてやまない、 まこと不思議な写真の数々であった。 どうした …
鶯の鳴かない遍路道
2012年3月22日 ぞめき(徳島新聞 夕刊 コラム)里山エッセイ
「キョキョ キョキョ ホケキョ」。 この辺のウグイスの初鳴きは2月28日だよ、 と友人の鳥先生が教えてくれた。 今年は、例年より4日遅れ3月3日に雑木林に帰ってきた。 高く伸びた榛の木、栗の木、合歓の木、 どの木を見上げ …
原発と向き合う
2012年3月2日 ぞめき(徳島新聞 夕刊 コラム)里山エッセイ
今年は寒気が続いて 梅の開花が遅いと心配していた。 道すがら見かける小梅の花が 今日一輪明日二輪、そして数輪。 弥生に入り春を数える。 東日本大震災と福島原発事故から丸1年がたとうとしている。 先日、小出裕章助教(京都大 …
おいしいごはん
2012年2月17日 ぞめき(徳島新聞 夕刊 コラム)里山エッセイ
おいしいごはんはどこにある、と聞かれたら即座に答える。 おいしいごはんは家にある。 毎日毎日食べているごはんがおいしいごはん、と。 家族が二人になってもう長い月日が経ち、 出掛ける事も多くて駆け込みで準備することもあるけ …
きさらぎ
2012年2月1日 ぞめき(徳島新聞 夕刊 コラム)里山エッセイ
今日から如月。 生更ぎの意で、草木の更生することだと言う。 山が笑う季節にはまだまだ遠く、 身を切る冷たい風に霜柱が立ち、 山はうっすらと雪化粧。 それでも、かすかにむらさき色に煙りはじめた山々。 雑木の林に黄緑色の葉が …
初音
2012年1月18日 ぞめき(徳島新聞 夕刊 コラム)里山エッセイ
初音の笛の音が聞こえる。 あれは竹笛だった。 雪が深々と降る大晦日、 元日に日付が変わると初音売りが、 リヤカーを引いてやってきた。 はつねぇ はつねぇ・・・ 新しい年の響きだった。 その声を聞くや、 家々から子どもたち …
時
2011年12月27日 ぞめき(徳島新聞 夕刊 コラム)里山エッセイ
飛行機雲が真っすぐに延びていく冬の空。 冷たい木枯らしも吹いて2011年が暮れていく。 明けていく年につながる一字を探す。 起、希、生、喜、建・・・止めどない。 瞬という字を思いつく。 一瞬の瞬きの間に全世界が変わったと …
園瀬川の鳥たち
2011年12月9日 ぞめき(徳島新聞 夕刊 コラム)里山エッセイ
「有漏路より無漏路へ帰る一休み 雨ふらば降れ風ふかば吹け」 探鳥会を翌日に控えて、 天気は如何?と友人にメ-ルをしたら、 すぐに一休禅師のこの短歌が帰ってきた。 そして当日、雨上がりの空が広がった。 「園瀬川流域環境保全 …
森に生きる田岡秀昭さん
2011年11月24日 ぞめき(徳島新聞 夕刊 コラム)里山エッセイ
落ち葉がくるくると風に舞い、 秋が終わろうとしている。 7月に急死された林業家田岡秀昭さんが 命をかけて守ろうとした嶺北の森にも、 落ち葉は降り積もっているだろう。 森に明かりをともしたい。 そのために重荷を一身に背負い …