満開の桜に春の嵐、
花びらのじゅうたんは薄桃色、
花吹雪もまた風情。

それにしても寒いな、花冷えだと嘆いていたら、
途端に風邪をひいた。
10年ぶりのこと、鬼がかく乱にやって来たらしい。

風邪など引く間もなく走っていたといえば聞こえが良いが、
ここ10年、毎年毎年事は起こり、
世の中の遷り変りに物申したい事ばかりだった。
普通の市民としてできる事は、
真面目に立ち向かうことしか出来なかった。
走る事が支えだった。
ところが熱を出してみると、
あったはずの大義名分はどこへやら、
会合は全てキャンセルとなった。
何より、自分がいなくてはなどという杞憂は
ひとかけらもない事に気づき、
青菜に塩の如く萎れてしまった。
いつもの体温36度がたった1度5分ほど上がっただけなのに、
体中がうなりをあげて反抗して苦しい。
筋肉が痛い、だるい、胃まで痛み、偏頭痛も。
体をエビのように曲げても、整体さながら反り返り伸ばしても治まらず、
体の持って行き場がない。
夜中転々また転々。
人間の体温は何故37度(直腸)か。体温の不思議。
苦し紛れにこの際極めようと体温の事をたずねたら、
家人がすぐに何冊かの本を持ってきた。

その一冊に、人が地球上で快適に暮らせる温度帯は
21度から25度までの間と書いてある。
この条件を元に、私には何やら分からぬのだが
数式(カナダのバ-トン)に当てはめると、
37度という数字が計算されるという。

長い適応と進化の歴史の中で、
それから体温は37度を保ち続けていると。
生命体の不可思議さを思い知らされる。
ともあれ、鬼のかく乱もおつなもの、
走り続けた10年のこの年月に
何者にも代え難い伴走者のいた事に祝杯。
夜中に頭にそっと載せられた氷枕の冷たさも忘れまい。
タオルに氷が包まれただけだから、
実際にはすぐにぽたぽたと溶けて始末に困ったのだけれど・・・。

これからは、天なる声に耳傾けて、
静に歩く事になるかもしれないが、
私たちみんなの上に希望輝く日々。
そのゴ-ルを目指し進みたい。

八木正江

里山の風景をつくる会 理事
地球温暖化を考える-市民アクション2012-徳島代表

2012年 4月18日(水) 徳島新聞夕刊 「ぞめき」より