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里山の風景をつくる

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森から私たちへの物語

落ち葉を踏みしめ、木漏れ日を浴び、鳥のさえずりをききながら、空気がおいしいことを確かに感じながら、ゆったりとして歩いている。
森の中で過ごすときのなんともいえないすがすがしさ、ココロもカラダもほっとする心地よさ、思い出してみてください。

森は地球のいのちの循環の源です。
森の木々は光合成をすることにより、酸素を出し、二酸化炭素を自らの中に閉じこめます。
落ち葉は上等の腐葉土となり、たくさんの微生物を育みます。
微生物は昆虫たちのえさとなり小動物や鳥もえさを求めて集まります。

森は雲を呼び、雲は雨を呼び、雨は大地を潤します。
豊かな土壌はふんわり隙間が多く、降った雨をゆっくり地下へとしみ込ませます。
たっぷり含み蓄えられた水は、やがて小さな流れとなり、流れを集めて川となり、遥か海までさまざまないのちを育んでゆきます。
大きく育った木はしっかり根を張り、大地を抱きしめ守ります。
洪水を防ぎ、渇水もさせず、森は天然のダムとなります。

ね、森ってこんなにすばらしい。
だから私たちは森を守りたい。
森に続く川を、海を、守りたい。
地球のいのちの循環を守りたい。

だから私たちは森に育つ木で家を建てるのです。
森のため、川のため、海のために。
そして私たちのために。
森の中にいるようなそんな幸せな家を建てるのです。

里山に風景をつくりましょう

私たちは緑の列島の木の文化をもつ民です。
昔から地域に産する木で家をつくり、住まいしてきました。
なぜってそれがいちばん自然だから。
地域の気候条件の中で育った木こそが、その地の家づくりにいちばん適した材料だから。

気温、湿度、雨、風などの自然条件への耐久性を備えた木と、土、藁、茅、紙、漆喰、自然から得られるさまざまな材料が、職人の英知と技によって見事に生かされ機能的で住み心地のよい住まいが生まれてきたのです。
土地の材料でつくられた家は風土に美しく溶け込み地域の景色を形づくり、地域の文化の結晶でさえありました。

山がいきいきと機能し、里では人と自然が寄り添って生きていた、私たちの暮らしの文化を取り戻したい。
だから私たちは、私たちの川の源の山に育つ木で私たちの木の文化を継承できる、そんな家をつくるのです。
奥山と人里をつなぐところ、人と自然をつなぐところ、それが里山。
里山の風景を私たちの暮らしに取り戻しましょう。

すべて土に還ります

日本人が住まいしてきたのは木、竹、土、紙、草、身近に産する材料でつくりあげた家でした。
みんな自然からのいただきもの。
だから役目が終わればすべて土に還ります。

木は、山で切り出してから住宅材料になるまで、製造過程でのエネルギー消費量と二酸化炭素の排出量が少なく、リサイクルも可能な優れた建材です。
しかも近くの山の木を利用すれば輸送コストも少なくてすみますし、輸送車のエネルギーと排ガスの削減につながります。

日本の森林は今、戦後植林された木の伐採期を迎えています。
適齢になった木を伐採し、有効に使う。
将来の木材資源として新たに植林を行い、森を再生させる。
森を適切に管理することで得られ続ける木という資源を、私たちは大切に上手に使わなければなりません。
使うことで山をいきいきと蘇らせなければなりません。

身近な自然から得た材料で家を建てること、私たちにできる、とびきりの環境への貢献です。

竹小舞と荒壁塗り

竹を裂き、組んでは結わき、細かな格子を編む、竹小舞。
塗り壁の土台となるものです。
とても手間のかかる作業ですが、編み上がりは美しく、光が射すと、壁を塗り込むのがもったいないほど。
この下地に、地元の土に藁を混ぜた荒壁が塗られ、さらに漆喰や珪藻土が塗られます。
土の調湿度、断熱性を支え、強度を高める大切な下地です。
小舞竹に適しているのは真竹か淡竹。
吉野川の河川敷には真竹が豊富です。

漆喰、美しき匠の技

漆喰は、石灰岩に加熱・加水し、海草糊などを加えてつくられます。
石灰は日本で自給できる唯一の鉱物。
土佐漆喰のように糊剤を用いず、発酵させたスサ(藁や麻の繊維)を用いるものから、砂を加えるものもありますし、製法はさまざま。
その土地に産する材料で土地ごとの製法がうまれたのです。
漆喰は防火性、遮音性、遮光性が高く、なによりも調湿性能にすぐれていることから、高温多湿な季節の長い日本の住まいにふさわしい材料として、広く用いられてきました。
カルシウムがベースのアルカリ性、カビや細菌も発生しにくいです。
土蔵で古文書を守ったのも漆喰、ピラミッドの内部で宝物を守ったのも漆喰です。

漆喰の静謐で圧倒的な美しさ。
素材の深みが空間に落ち着きとやわらかさを生みだします。
漆喰を塗れる職人さんはどんどん少なくなってきています。
なぜって腕を振るう場がないから。
こんなに美しい匠の技、守り伝えていきたいものです。

一本の木栓の大きな力

家の普請の現場にはステキなリズムがありました。
木づちをふるう音、のこぎりの音、カンナを削る音。
家をつくる小気味よい音はなんともいえないいい響き。
美しい木目をした鰹節のようなカンナ屑はそれはいい匂い。
里山の家の普請現場には今もこのリズムが流れています。

柱や梁の材料は現場で切って組まれてゆきます。
柱と土台、梁と柱、切り組みしてつないだ接合部をより強くするためにふたつの部材を貫通させて木の栓を埋め込みます。
これが「込み栓」、カシやクヌギなどの堅い木でつくられます。
先が細くなるように加工し、頭の部分は出しておき木材の乾燥で隙間ができるとさらに打ち込み補強します。

栓をがっしり打ち込むと、びくともしなくなり構造は一体化してより安定します。
もし周囲が腐っても込み栓でしっかり支えますし補修も悪くなったところだけをすげ替えればいいこと。
釘や金物は環境によっては発錆し、腐食し、性能低下し、結露を呼び込んで木そのものをも腐食させてしまうこともあります。
だから金物に頼らない先人の知恵と技!
誇るべき伝統工法です。

プレカット材やパネルが運ばれあっという間に組みたてられる家と比べればずいぶん手間暇かかります。
でも手間のかかるぶんだけ、強くやさしくつくられる里山の家。
作り手も施主も家への愛着はどんどん深まります。

住まいは人を育てます

木と土と草と紙でできた居住空間が、明治になり、レンガやコンクリート、鉄筋に取って代わられてからも、建物の内部の壁は漆喰や土で塗られていました。
塗り壁が姿を消すのは新建材が普及していったわずか数十年の間のこと。
住まいは呼吸をしなくなり、木や土や草や紙に宿るやさしい気配もすっかり失われてしまいました。
便利さや手軽さ、見かけのよさばかりを追い求めたただの物質のような家は、子も孫も末代までも住んでほしい家であるわけがなく、不便になれば壊すのも簡単。
こうして私たちは放蕩を続けてきたのです。
住まいは人を育てます。
乱暴に扱えば、壊れる、傷つく、シミがつく、紙や土の空間で物への慈しみや、思いやり、我慢する心が育まれてきたはず。
木と土と草と紙の家が育んできたやさしさを再び取り戻せますように。
住まいは人を育てます。

山と人と葉枯らし乾燥

吉野川源流、嶺北の森に分け入ったことがありますか?
清らかな森の精気に満ちたところ。
日を昇らせ、日を沈ませ、一日を、季節を、しっかり映しながら、大きく流れる吉野川の最初のひとしずくに出会うところ。
そこには森を守り育てる頼もしい人々がいます。

…80年、100年生きるいい木を残すためにきっちり間伐をする。
切った木のいいところは使い残りを森に残せば、土に還って栄養になる。
伐採した木は、枝葉をつけたまま何ヶ月も山で寝かせる。
葉の蒸散作用を利用してゆっくり乾燥させる昔ながらの葉枯らし乾燥。
急激に水分を抜く人工乾燥と違い、いい色、いい艶。
美しいばかりか、割れ・くるい・そりの少ない強い材料になる…

80年、100年かけて育った木は木材となっても呼吸して、樹齢の分だけ生き続けます。
80年、100年かけて育った木でつくる家は子へ、孫へと伝えながら大切に使い続けなければなりません。
手間ひまかけて森を育て、木を育てる人が、嶺北の森に、日本の森に、ちゃんといてくれる。
だからそのあまたの森のそばに山の木を使う人が必要なのです。
森が生きて、機能し続けるために。

シックハウスはなくなるかしら?

建材や家具に使用される接着剤や塗料から、揮発性の有機化合物が発散されていることは皆さんよくご存知でしょう。
すぐに浮かぶのがホルムアルデヒド。
こうした化学物質が引き起こすからだの不調が「シックハウス症候群」「化学物質過敏症」などと呼ばれ、ずいぶん前から大きな社会問題になっています。

この間、建築材料のホルムアルデヒド放出量に対してJISやJASに規格が定められたり、住宅性能表示制限では新築住宅における6種類の化学物質の濃度表示が可能になったり、厚生労働省が13種類の化学物質について濃度指針値を示したりしてきましたが、その実態はまだまだ明らかではなく、対策はずいぶんと立ち後れていました。
今も多くの人が苦しみ、新たに発症する人がいて、そして住まいばかりか、子どもたちの学校もその大部分がシックスクールだとの調査結果が出ています。

そして2003年7月、やっと建築基準法改正。
でもその中身は、新築住宅のホルムアルデヒドへの規制と換気設備設置の義務付け、クロルピリホスの使用禁止が定められるにとどまっています。
これらは有害物質を減らすことはできても、本当の解決にはなっていません。
いかに減らすかではなく、化学物質を発散する材料をいかに使わないか…これが、健康な住まいのための指針です。

すがすがしさへの意志

こころもからだもむしばんでゆく化学物質。
引き起こされるシックハウス。
法の整備を待たずとも、解決できる方法を私たちは知っています。
実はとても簡単。
住まいにできるだけ化学物質を持ち込まないこと。
だから、無垢の木の家に無垢の木の家具を置き、漆喰や土の壁に囲まれて暮らせばいい。
調湿効果が高く、風通しのいい家をつくればいい。
化学物質に悩まされることなどない、自然素材の力に充ちたすがすがしい家。
そんな家は意志さえあれば誰にでも建てられます。

感じる家

熱だしてひとり寝ている表座敷。
天井の節目に空想飽きもせず。
土間の隅、階段の下、なにかが潜んでいるような。
あの暗がりの不思議。

すいかを食べた。花火をした。家庭訪問の先生が腰かけた。
日なたぼっこした。寝そべって宿題した。
縁側のそのステキな多様性。

しみじみとなつかしいあの住まいするという感覚。
肌で感じる家というもの。
もいちど、出会いたい。

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