「有漏路より無漏路へ帰る一休み
雨ふらば降れ風ふかば吹け」

探鳥会を翌日に控えて、
天気は如何?と友人にメ-ルをしたら、
すぐに一休禅師のこの短歌が帰ってきた。
そして当日、雨上がりの空が広がった。
「園瀬川流域環境保全の会」が発足して6年になる。
産廃だ、水質調査だ、公害調停だ、裁判だ、
普段の生活とはまるで縁遠い事態に直面して
一生懸命の日月が過ぎて行きつつある。
そんな中で、もっと園瀬川を知りたいと企画した。

上八万町花房、園瀬川にかかる鶴熊橋から
1キロほど上流の色面橋を渡りぐるっと2時間、
田んぼと森と竹やぶに囲まれた
のどかな里地を歩いた。
「今年は暖かいから冬鳥が少ないようだが、
10種類から15種類は見られるはず」
と案内人の曾良寛武さん。
はて、どこにも鳥の姿は見えないが・・・
耳を澄まし目を凝らすと、聞こえる、見える。
鳥の気持になって探すと
鳥の居場所は自然と目に入ると曾良さん、
はずれることのない勘に感嘆。
アオジ アオサギ キジバト キセキレイ
ウグイス ヤマガラ カルガモ ヒドリガモ
モズ カワセミ ハシブトガラス ハシホソガラス
セグロセキレイ ヒヨドリ  トンビ。
冬鳥と留鳥合わせて15種類に会うことできた。
コバルトブル-の羽が光るカワセミにも会えた。
ハシブトガラスとハシボソガラスの鳴き声の違いも、
鳥たちの地鳴きとさえずりの使い分けも知った。
園瀬川は大河原高原の旭ヶ丸を源流とし
佐那河内村、徳島市を流れる典型的な里川。
多くの希少動植物を残し自然の生態系を保っている。
それを証するように用水路に群れ成すメダカ、
鶴熊橋の下に姿を表すクサガメ、
ニホンヒキガエルも道端に登場、
その奇怪で愉快な姿を楽しんだ。
一方で外来種のミシシッピアカミミガメやブラックバスが
どんどん増えていると言うから
在来種との攻めぎ合いが起きているに違いない。
名にしおはば 逢坂山のさねかづら
人に知られでくるよしもがな
三条右大臣  後選集

一名美男葛と名のつく紅い実に、
こんな歌も思い起こされ、
風の音に乗るさえずりが
時を忘れさせた探鳥会だった。
八木正江

里山の風景をつくる会 理事
地球温暖化を考える-市民アクション2011-徳島代表

2011年12月9日(金) 徳島新聞夕刊 「ぞめき」より