年別アーカイブ: 2009年
廃市
2009年8月6日 ぞめき(徳島新聞 夕刊 コラム)里山エッセイ
「・・・さながら水に浮いた灰色の棺(ひつぎ)である。」 (北原白秋『おもひで』) それは7月の終わりから8月にかけての一夏の出来事であった。 卒業論文の執筆のためにある町で過ごすことになった 青年の手記の形で物語が進んで …
棚田と水源と虹の橋
2009年7月27日 ぞめき(徳島新聞 夕刊 コラム)里山エッセイ
吉野川の源流 豊葦原瑞穂の国大和と言う。 3500年の稲作の歴史を持つ豊かに穀物の実る島とは、 古事記や日本書紀を持ち出すまでもなく、 天まで届くような棚田に立って自ずと実感した。 7月の風が吹き渡り、 今まさに稲穂をは …
腹時計のセンス
2009年7月15日 ぞめき(徳島新聞 夕刊 コラム)里山エッセイ
昔から腹時計にはいささか自信がある。 15分ぐらいの誤差で、時間が分かるのだ。 絶対音感というのがあるそうだが、私の場合は“絶対時感”。 体内時計の感度がいいのであろう。 朝起きるのも、明日は何時に起床すると心に念じてお …
ふたたび宝の山に
2009年7月9日 ぞめき(徳島新聞 夕刊 コラム)里山エッセイ
光る地面に竹が生え、青竹が生え、・・・地上に鋭く竹が生え、 まっしぐらに竹が生え・・・竹、竹、竹が生え、 と歌ったのは萩原朔太郎だった。 さわやかな青竹のイメ-ジにぴったりなのだが、しかし、しかし。 竹が生え過ぎではない …
里山の風景をつくる
2009年6月30日 ぞめき(徳島新聞 夕刊 コラム)里山エッセイ
Photo by HIROMU SORA 空(くう)を切り裂くようにホトトギスひと声、雑木の林を渡って行った。 ここしらさぎ台は、雑木林に隣接している宅地が多い。 芽吹きの春、緑滴る夏、紅葉する秋、冬木立。鳥が鳴き、四季 …
六月
2009年6月29日 ぞめき(徳島新聞 夕刊 コラム)里山エッセイ
梅雨空の間から強い夏の日差しが顔をのぞかせる。 三年前に亡くなった茨木のり子さんに『六月』という詩がある。 “どこかに美しい村はないか 一日の仕事の終りには一杯の黒麦酒(ビール) 鍬(くわ)を立てかけ 籠を置き 男も女も …
生まれてくれてありがとう
2009年6月15日 ぞめき(徳島新聞 夕刊 コラム)里山エッセイ
エリザベス・テイラーが少女のころに主演した映画『緑園の天使』。 イギリスの小さな町に住む馬好きの少女ベルベット(テイラー)とその家族の物語だ。 イギリス第一の競馬大会、グランド・ナショナルに愛馬を出場させることを夢見る娘 …
生物多様性って何?
2009年6月12日 ぞめき(徳島新聞 夕刊 コラム)里山エッセイ
思いがけず「ぞめき」の宴に参加できることになった。 徳島に住んで45年になろうとしている。 信州育ちには海かと見紛うばかり広大な吉野川。 川面に落ちる夕陽に感動した。 「悠揚流れ往く吉野川に静かに釣り糸を垂れることもでき …