吉野川の源流

豊葦原瑞穂の国大和と言う。
3500年の稲作の歴史を持つ豊かに穀物の実る島とは、
古事記や日本書紀を持ち出すまでもなく、
天まで届くような棚田に立って自ずと実感した。

7月の風が吹き渡り、
今まさに稲穂をはらまんとする葉の重なりは
濃い緑のじゅうたん。
側溝を流れる水は澄んで冷たく
一面の棚田を潤している。
この水はどこで生まれる?

ここは高知県土佐町、
早明浦ダムのあるれいほく地方の真中に位置して、
森と水のまちを標榜する。
この度(自然派)生協が企画した
「水源の森と棚田ツアー」に参加した。
大阪から徳島から大勢が参加し、
大人も子どもも見事な棚田に感動、
改めて吉野川の「川上と川下を結ぶ物語」を思い起こした。

吉野川源流域で米を作るからには農薬は使うまい!
たった3人の農家が固い決意で始めた米作り、
その米を「源流米」と名づけて25年が経つ。

吉野川に落ちた「源流米」というひとしづくの波紋は、
今や30軒を越える地域全体の農家にまで広がった。
標高600mの棚田は昼夜の温度差が大きく、
昼間の強い太陽で作られるでんぷんは、
冷たい夜に稲に貯えられ粘りと甘さの元となっている。

今回ツアーの目玉は棚田を潤す水源をたずねること。
渓谷の水音を耳に、くねくねと細い山道を上る。
軽トラの荷台に分乗して
大人も子どもも、原生林を行く探検隊。
棚田から約6キロ、谷神に迎えられて水源の鍋割谷に到着。
ここは別天地、ひんやり涼しく香る風と空気。

清冽な音を立てて谷間から流れ落ちる水の音、
苔むす岩、
手に掬って口に含むと甘く広がる水の精気。
多量のミネラル分を含んでいる。
「源流米の田んぼは飲んでも平気な水で作っている。」
と聞いているが、確かにと思う。
地下のパイプを通って水田に届く。

源流米は一色の虹の橋。
源流米の運動は、水が生まれる水源の森の大切さを気づかせ、
まちに暮らす私たちが木を使う運動へと発展した。
虹の橋は二色になった。

さらに、土佐町に出来た「有機の学校」は有機農業の拠点となり、
今徳島でも、地道に広がりつつある有機農業を育てる動きに
つながっている。
虹の橋が七色に輝く日まで、
つながりの物語にかかわり続けたいと思う。

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里山の風景をつくる会 理事
地球温暖化を考える-市民アクション2009-徳島代表  八木正江
2009年 7月 25日(土) 徳島新聞夕刊 「ぞめき」より