ノウゼンカズラが満開となり
オレンジ色の落花が真夏の到来を告げる。
雑木林の蝉時雨はクマゼミ。
ミンミン蝉はもういない。
合歓の木にツピツピツツピ-と甲高くシジュウカラ、
夕昏6時を過ぎるとカナカナカナと涼しげな声。
カナカナ蝉は秋の季語だけれど。
そういえば去年もその前の年も梅雨明けすぐから鳴いていた。

この夏、来る日も来る日も取りつかれたようにつぶやいているのは
「生物多様性」という言葉。
95対35この数字?
地球温暖化の知名度と生物多様性の知名度の対比だそうな。
生物多様性・・・
ほんとにそんなに難しくて、3割の人にしか知られていないのだろうか?
先日NPO保全生物学研究会による、「食と生物多様性」という
大変楽しいシンポジウムがあったのだが、
あれを聞いたらうんうんと納得できたのに。

そこで私が学んだキ-ワ-ドは「生態系サ-ビス」。
それには4つの意味があるなんて分類はさておいて、
私たちは自然界からのサ-ビス(恩恵・利用)なしには生きていけないということ。
そしてそのサ-ビスは「ただ」ではないということ、
「生態系サ-ビスをただで享受し、その源泉となる生物多様性を破壊しても、
なんの負担もしないでいいという時代は過去のものとなった」
(井田徹治「生物多様性とは何か」)簡単明瞭。
そして、少し話は飛躍してしまうのだが、
事例として大変分りやすかったのが「かてもの」の話。
「糧物」「救荒作物」と書けば分るように、
米沢藩主上杉鷹山が飢饉に備えて
「食べて保全せよ」と進めた80種の植物(とその指導書)のこと。
アカザ、イタドリ、イヌビユ、オオバコ、ガガイモ、ガマ、カラスウリ、タンポポ、
ギンナン、クズ、スイカズラ、スベリヒュ、タネツケバナ、ツユクサ、ヒルガオ、
フジ、フキ、ノビル、マコモ、ミゾソバ、ミツバ、カンゾウ、ヨシ、ヨモギ・・・

さつまいもの茎まで食べて、戦後のひもじい時代を知っている私は
思わず「知ってる、食べたことある!」とつぶやいてしまった。
野に咲く花々は貴重な「かてもの」として植物の多様性を保っていたのだ。
外来種に負けるな、絶滅するな。
当たり前の植物が当たり前に咲き続けられるよう願わずにはいられない。
里山の風景をつくる会 理事
地球温暖化を考える-市民アクション2010-徳島代表  八木正江
2010年7 月28日(水) 徳島新聞夕刊 「ぞめき」より