<いわむら かずお 著 『14ひきのおつきみ』 童心社 1,260円より>
あさって10月6日は中秋の名月だ。
人間以外の動物もお月見をするのかどうか、私には分からないが、いわむらかずおさんの絵本『14ひきのおつきみ』では、ねずみの家族が木の上に月見台をつくってお月見をする。
いわむらさんの「14ひきシリーズ」は、おとうさん、おかあさん、おじいさん、おばあさん、そしてきょうだい10匹の合わせて14匹のねずみの大家族の物語だ。森の中の豊かな自然の移ろいとともに、ねずみたちの生活がやわらかな描線と色合いで描き出されている。
いわむらさんの絵本のことを教えてくれたのは、絵本大好き人間のIさんだ。ご自分の家の設計を頼むとき、こんな家が理想なんですと、バージニア・リー・バートンの絵本『ちいさいおうち』をプレゼントしてくれた方だ。
そして、プレールームに絵本がいっぱい置けるIさんの家が完成し、いよいよ明日から引っ越しという日、Iさんは設計のお礼にと一冊の本をくださった。
それが、いわむらかずおさんの『14ひきのひっこし』だった。ねずみの大家族が、森の中の木の根っこを新しいすみかにするために、みんなが力を合わせて巣をつくり、引っ越すお話だ。
その絵本を読んで、私はIさん一家が新しい家を大切にし、みごとに住みこなしていくだろうと確信したのだった。
この「14ひきシリーズ」は、『おつきみ』『ひっこし』のほかにも『あさごはん』『さむいふゆ』など全部で11冊のすてきな絵本集になっている。表紙のカバーを外すと、何と別の絵が出てくるというのがうれしい。
満月の夜、木の上のお月見台で、14匹のねずみたちはおだんごやクリを食べながら、お月さんと楽しいお話をする。そして月の光を顔に受けながら「おつきさんありがとう、たくさんのみのりをありがとう、やさしいひかりをあれがとう」と祈るのであった。
さあ、私もねずみたちのように月に祈りをささげよう。「どうか徳島が、もっともっと美しい町になりますように。見苦しいラブホテルのサーチライトも、いつかはなくなるでしょう。やさしい光で、私たちを照らしつづけてください」。
建築家 野口政司(徳島新聞 夕刊10月4日より) http://www.topics.or.jp