天に向かって咲く白いモクレン。
両の手を合わせ、
愛しいものをつつみ込むようなふっくらとしたつぼみが、
やがていっせいに花開く。

津波の怒涛が、廃墟になった家々が、立ちすくむ人々の映像が、
追い討ちをかけたきばむく原子力発電所の無残な姿が、
白いモクレンの向こうに重なって見える。
二度と還らぬ愛しい命がどれだけあるのか心が痛む。
石巻出身の作家辺見庸は、
「ふるさとの海は余りにも美しい!」と書いた。
美しい春。
喪失との落差にことばを失ってしまうのだが、
今大災害の苦しみには、
この地震国に住む誰もが真剣に立ち向かわなければならない。

何ができるか?と問い続けている。
誰もが自分のなすべき答えを見つけ、動く時だと思う。
この時を逃してはならないと言い聞かせる。

私の周りに二つの動きが始まっている。
ひとつは「できること(支援・協働)プロジェクト(仮)」。
徳島のNPO団体やボランティアグル-プが、
それぞれの活動の特色を持ち寄り、
支援の輪を広げようとする組織作りである。
すでに準備会が始まり、全国の動きにもつなげる。

いつ起こるかもしれない災害。
お互いに助け合うためのアイデアが、
アイデアを呼ぶ動きとなってきている。

さらに「応援米」プロジェクト。
食糧基地としての豊な四国を生かし、
この秋被災地に米を届ける。
届ける米を作る人を募る。
休耕田を復活させ、田植えや稲刈りを手伝う。
移住し新天地を求める人があれば定住支援ともなり、
受け入れる過疎の村が明るく蘇ることもできる。
このプロジェクトには土地の提供や、買取りの問題や、
届け先への運搬や、さまざまの課題があるが、
食と農は国の礎、
市民と行政が手を携えながら進めていく事で、
新しい公共、新しい協働のしくみを作り上げていく柱にもできると思う。

「これならできる」。
今、一人一人が動く時、
持続可能な日本の未来はその先にある。
里山の風景をつくる会 理事
地球温暖化を考える-市民アクション2010-徳島代表  八木正江
2011年3月30日(水) 徳島新聞夕刊 「ぞめき」より