合意形成という言葉がはやっている。
春が来ているのに粉雪が舞ったり、
日傘が欲しいような紫外線を感じたり、
三寒四温の春は気まぐれ。
季節の巡りに合意形成はあるのか、と妙なことを考える。
天空にいる白いガウンをまとった季節神がつえをひと振りふた振り、
誰とも合意形成はいらないよ、自然の摂理に従えばいいのだから、と
つぶやいている声が聞こえる。
久留米にいる娘から電話があり
「道路を作る時の合意形成って、お母さん何のこと? 大事なん? 」。
「・・・・」。
まちづくり、環境のこと、行政の施策に市民の意見を反映させたいと、
日頃、合意形成を強く唱えているのに一瞬言葉が出ない。
私の住む町では南環状線道路の工事が進み、
見慣れた田園風景が日々に姿を変えていきつつある。
でも、何も言わずに黙って見ていた現実もあるから、答えられない。
聞けば、久留米柳川線といって、バイパスとバイパスをつなぐ道路が、
娘の住んでいる地域を通ることになって、
300軒ほどののどかな町は大揺れに揺れているらしい。
計画は18年も前に作られたが、今やっと地元説明会が開かれた。

ことの始めは、1月のみぞれ降る寒い日に、近所のおばあちゃんが
「こげな静かな田舎に、なんで道路ば造らんといかんとね? こんままでよかたい。」と
一軒一軒署名簿を持って回ったことにある。
娘は余りに真剣なその姿に打たれ、知らん顔はいかんと署名活動に協力、
勇気を出して説明会にも出かけた。

じいちゃんばあちゃんは強かった。
相談なしの道路はいらんの怒号と、しどろもどろの担当者の応答にびっくり仰天。
一人だけいた若い男性が合意形成、合意形成と迫っていて、
先の質問になったらしい。
質問に答えるべく、つい先日勉強したばかりの資料から、
合意形成の本質を表す言葉を探してみる。
信頼、協働、パ-トナ-シップ、公平、公正、科学性、第三者性、住民主権・・・
これらをシェ-カに入れて振って見ようと、また妙なことを考え、得た答えは、
合意形成とは、自然の摂理にかなう判断をすること、
唱えるより実践が第一であるということ。
果たして娘が理解できるかどうか。

 

里山の風景をつくる会 理事
地球温暖化を考える-市民アクション2010-徳島代表  八木正江
2011年3月11日(金) 徳島新聞夕刊 「ぞめき」より