『古事記』にイザナギ、イザナミが国産みをする場面がある。
始めに生まれるのがオノコロ島(淡路島)で、次に四国が生まれる。

四国は「身一つにして面(顔)四つあり」の姿で、
それぞれに男女の名がつけられた。

讃岐は男性で飯依比古(いいよりひこ)、
阿波は女性で大宜都比売(おほげつひめ)と呼ばれた。
大宜(おほげ)は大食(おほけ)で食べものが豊かな国という意味である。
土佐は建依別(たけよりわけ) ― 雄々しい男という名であり、
伊予は愛比売(えひめ)で、いい女という意味で、現在の県名になっている。

何となく四国四県の性格があらわれているようで、
神話とはいえなるほどと思うのである。

大宜都比売は五穀の神様であり、現在も神山の一ノ宮大粟神社に祭られている。
讃岐の飯依比古は、その食べもの(五穀)にたよるのであり、
讃岐男に阿波女の神話版といえようか。

おそらく、阿波の国は温暖で雨も多く、
古代より食物の生育に恵まれた土地であったのだろう。

さて、先日「エコタウン徳島をめざして」という連続ワークショップが開かれた。
第1回目が『食べる』で、
この後『住まう』、『動く』、『平和(いき)る』と四つのテーマを巡っていく。
気候変動による地球環境の悪化を防ぐための方策をさぐるワークショップで、
「地球温暖化を考える ― 市民アクション2008― 徳島」による集まりであった。

豊かな環境に恵まれた私たちの住む徳島を、
石油エネルギーに頼らない自立した町『エコタウン徳島』として、
これからの社会のモデルにしていこう、というのがそもそもの発想である。

ワークショップの中で、参加者から様々な意見、イメージが出された。
・市民(家庭)菜園をつくり生ゴミを堆肥に。
・早く家に帰り家族で食事を。
・親子で台所に立ち食文化を大切にした食育を。
・コンビニ、ファストフードの店に頼らない町に。
・ニートの子たちに農作業を体験してもらおう。
などの具体的な提案がなされた。

とっておきの意見は、即実行可能であるが、
(私にとっては)なかなか難しいユニークなものであった。
それは『腹八分目』というキーワードであった。

大宜都比売も苦笑いしているのではないだろうか。

建築家 野口政司   2008年 12月4日(木) 徳島新聞夕刊 「ぞめき」より