地球家族の家

今日は素敵な建主のことを話そう。
今月十四日に、シンポジウム『まちに森をつくるイン徳島大学―森・里・まちを結ぶ』を開いた。
このシンポジウムは、学生たち若者に森の大切さ、木の家の魅力を知ってもらい、
どうすれば美しい風景がつくれるのかを考えるのがテーマだった。
主催したのはコープ自然派徳島、NPO里山の風景をつくる会などだが、
シンポジウムの後には、太鼓奏者ヒダノ修一さんのスーパー太鼓コンサートが聴けるという、それこそスーパージョイント企画だ。
講演は、吉野川源流の森の木でつくった里山の家“地球家族の家”のオーナー・吉田修さんにお願いした。
演題は「熱血吉田道場―地球家族の家の実践」。
NPO法人TICO(徳島で国際協力を考える会)の代表である吉田修さんは、
吉野川市で医師をしながらアフリカ・ザンビアの自立支援活動を続けている。

主に保健・医療・農村開発の分野が中心だが、ヒダノ修一さんらと共に現地に学校を建てるなど、幅広い協力・支援を行っている
吉田さんは、自宅の改築に当たって、自分たちの住まいだけでなく、
NGO、NPOの事務所や看護士宿舎、心身障害者の自立支援のためのパン工房や無農薬野菜の販売所、そして何より良き理解者であり同志でもある妻、益子さんの環境活動の事務所などの複合建築として建てた。

この家は“地球家族の家”と名づけられ、けっして美しいとはいえない国道沿いの風景の中で、独特のさわやかな印象を与えてくれる。
まるで吉田さんの活動、生き方そのものを象徴しているかのようだ。

今、吉田修さんが力を注いでいるのは、次世代を担う若者たちの育成だ。
地球家族の家の屋根裏部屋で開かれる「吉田道場」では、地球環境・国際協力などについて若者たちが学んでいる。

この四月には、この道場で育った学生たちがTICOユースを結成し、
今回のシンポジウムやコンサートの運営を担った。

吉田松陰の松下村塾や緒方洪庵の適塾のように、時代を切り開く人材を育てたのは小さな私塾であった。

しなやかな感性あふれる若者たちの今後の活躍が楽しみだ。

建築家 野口政司  徳島新聞夕刊2007年7月23日 「ぞめき」より