『不都合な真実』

「しばしば人生は、われわれを素足で、裸で、
失われた機会に呆然と立ち尽くさせたまま置き去りにしていく・・・」

ノーベル平和賞を与えられることになったアル・ゴア氏が
『不都合な真実』の中で述べている言葉だ。
地球温暖化の危機に対して、世界レベルでの取り組みの必要性を説き、
「一日延ばしは時の盗人」であると。

2000年のアメリカ大統領選に出馬したアル・ゴア氏は、全投票数では上まりながら、
フロリダ州の集計の疑惑を残したまま、きん差で敗れた。

大統領に就任したジョージ・ブッシュ氏は、着任した最初の週に、
二酸化炭素排出量を規制するという、選挙運動中の約束を反古にしてしまった。

「大統領は、温暖化などまったく問題ではないと言っている」。

政府高官のこの発言に対しての米国民、あるいはゴア氏の無念の感情を
冒頭の言葉は表わしているようにも思える。

選挙後、ゴア氏は原点に立ち返り、自分が本当にやりたかったこと、
地球環境を守ること、地球温暖化の危機についてのスライド講演会を始める。

『不都合な真実』は、その6年間に渡る活動を記録した映画であり、書籍である。

原題は 『AN INCONVENIENT TRUTH 』。
日本でもよくつかわれる便利なという意味の「コンビニ」の頭に、
not の意味のIN が付いて「不便利な」「具合の悪い」「迷惑な」となる。

邦訳の『不都合な真実』は、ストレートで、少し硬い訳である。
ゴア氏は、この真実を議会が認めると、何らかの法律で対応せざるを得ないので、
議員たちにとって地球温暖化は“不都合”な真実であると語っている。

しかし、原題には、私たちが忘れてしまった、あるいは見捨ててきた
“不便利”な生活の中にこそ隠されている本当の豊かさ(真実)があるのだ、
という意味が含まれているのではないだろうか。

そのことを見落としてはならないだろう。

ゴア氏は、私たちにすぐできることとして次の十点を挙げている。

1,電球を省エネ型に
2,アイドリング ノー
3,リサイクル製品を
4,車の燃費を上げよう
5,こまめに蛇口をしめよう
6,リサイクル・エコ・バッグを使おう
7,エアコンの設定温度を変えよう
8,たくさんの木を植えよう
9,子どもたちは、地球をこわさないでと両親に言おう
10,映画『不都合な真実』を見て、友人にも勧めよう。

日本でも今年の1月から映画館で上映され始め、書籍版も発売された。
しかし、全国で徳島県だけが未上映であるという。
『環境首都徳島』にしては、あまりにおそまつで、情けない気分になる。

徳島でも何とか上映会を企画したいものである。賛同される方は
NPO法人里山の風景をつくる会(電話088-655-1616)までご連絡を。

建築家 野口政司   2007年10月25日(木) 徳島新聞夕刊 「ぞめき」より