年別アーカイブ: 2011年
雨土と蛍
2011年6月19日 ぞめき(徳島新聞 夕刊 コラム)里山エッセイ
水無月と聞くや、 咲き始めていたクリの花が満開になっている。 穂状に垂れる白い房々が、 秋にはイガグリ頭のクリの実になるとは摩訶不思議。 ゲ-テ形態学論集・植物篇という本があって、 そこには花から実への秘密が書かれている …
復興住宅の提案
2011年6月4日 ぞめき(徳島新聞 夕刊 コラム)里山エッセイ
NPO里山の風景をつくる会は、震災後自分たちにできることを探してきた。 「まちに森をつくろう」と、吉野川源流域の木を使った家を建て続けて10年、 川上の森で林業を営む人たちと、川下のまちで木の家に住みたい人たちの願いをつ …
夏は来ぬ
2011年5月22日 ぞめき(徳島新聞 夕刊 コラム)里山エッセイ
小さな丸いつぼみが膨らんで、 まっ白に卯の花が垣根にこぼれると、 かすかに甘い香りがして足を止める。 柔らかな緑の滴る雑木林には 日がな一日小鳥が囀っている。 「卯の花の匂う垣根に・・・」。 佐々木信綱作詞の「夏は来ぬ」 …
いのちはぐくむ
2011年5月16日 ぞめき(徳島新聞 夕刊 コラム)里山エッセイ
春を告げ春を寿ぐウグイス。 今年もなわばりの雑木林に帰ってきた。 ケッキョケッキョ、数日後にはもうホ-ホケキョ。 震災からすでに49日、 美声に聞きほれながら、2時46分に捧げる黙祷。 肝心の事は何だろう? 考えて動く。 …
それは違う
2011年4月15日 ぞめき(徳島新聞 夕刊 コラム)里山エッセイ
原子力発電所の地にいつ春が来るのか心が痛む。 日本は北から南まで、点々と原子力発電所が並び その数55基、計画中10基、まさに原発列島。 南から花開く桜列島に原発が重なって見える現実はつらい。 今から30年も前の愛媛県伊 …
これならできる
2011年4月1日 ぞめき(徳島新聞 夕刊 コラム)里山エッセイ
天に向かって咲く白いモクレン。 両の手を合わせ、 愛しいものをつつみ込むようなふっくらとしたつぼみが、 やがていっせいに花開く。 津波の怒涛が、廃墟になった家々が、立ちすくむ人々の映像が、 追い討ちをかけたきばむく原子力 …
合意形成
2011年3月18日 ぞめき(徳島新聞 夕刊 コラム)里山エッセイ
合意形成という言葉がはやっている。 春が来ているのに粉雪が舞ったり、 日傘が欲しいような紫外線を感じたり、 三寒四温の春は気まぐれ。 季節の巡りに合意形成はあるのか、と妙なことを考える。 天空にいる白いガウンをまとった季 …
鍋から見える
2011年2月25日 ぞめき(徳島新聞 夕刊 コラム)里山エッセイ
はかせ鍋、圧力鍋、土鍋、タジン鍋、ゆでもの鍋、 すき焼き鍋、ダッチオ-ブン、無水鍋、中華鍋、 雪平、ミルクパン、蒸し器・・・・あるある。 狭い台所に並ぶのは土鍋と雪平だけ。 食卓に上るのは豆腐におひたし、煮物に焼き魚と …
森の精の住む病院
2011年2月10日 ぞめき(徳島新聞 夕刊 コラム)里山エッセイ
大安のその日、冬の空は真っ青で、 少し遠いがなだらかな山の稜線に囲まれた地に 掛矢の音が響いていた。 太い棟木や登り梁が次々とクレ-ンで下ろされる。 手慣れた大工さんたちがえいっ、やっと受け取り、 切り組みをぴったりと合 …